「初期費用0円で作るケータイ公式サイト」の大失敗
失敗事例
もうかなり大昔の話になるのですが、時効だと思いますのでご紹介いたします。弊社の「初期費用0円で作るケータイ公式サイト」で、一度火だるまの大失敗をした事がありました。
それは東京のクライアントで、サイトからのお問い合わせがきっかけでした。弊社は新規お取引のほとんどがサイトからのお申し込みからになっています。
「公式携帯サイトを構築をします。既にKDDIの企画審査を通っており、開発先を探しているところです。今までにない斬新な企画で、キャリアの反応もすごぶる良く、大きな収益を期待出来ると確信しています。ですが、先のことを考えると、自社開発だとスケーラビリティの問題もあり、出来ればコンテンツや企画検討に特化していきたいので、もし良かったら、単に受託での構築じゃなく、レベニューシェアで一緒にやっていただけませんか?」
という様なお問い合わせでした。
企画書を拝見させて頂くと、アバターが身につけるアイテムは全て個別課金で-今でこそあまり珍しい話ではありませんが-当時としては極めて斬新で、「おもしろい企画」でした。また、この前後、お問い合わせを頂いたお話が、キャリアの企画書もまともに作っていない、生煮えのお話が続いたこともあり、そこと比較すると、ドキュメントのクオリティといい、とても光って見えたのです。
我々はその内容の斬新さにも目を奪われてしまい、「コレは行ける!ユーザーがつくぞ!」と、事業性評価をしっかりせずに、初期費用0円での公式携帯サイトの構築をお引き受けしまったのです。構築に当たっては、弊社が普段利用している自社プロダクト、「携帯公式サイトベースシステム」を利用しました。カスタマイズを前提にしたベースシステムですので、0から作るよりはるかに少ない工数での構築が可能です。
しかし、ここからがドツボの始まりでした。元々企画が凝っている分、構築に手数がかかるのは想定内ではあったのですが、懲りすぎていた点も多々あったため、途中から仕様の矛盾や、仕様変更が山のように入り、またいろんな事情もありで、最大で月に数十人の人材を投入するハメになってしまいました。当然完全レベニューシェアですので、初期費用は1円ももらえません。しかし、これさえ立ち上がれば・・・という気持ちもあり、まさか納期を遅らせる訳にもいきませんから、当社のありとあらゆるリソースを(ある意味採算度外視で)徹底的につぎ込んだのです。
そうして、どうにかこうにか苦労の末、サイトは何とか立ち上がったのですが、「さあ、来るぞ!これから構築費用の回収だ!」のはずが・・・結果は惨憺たるものでした。時代が早すぎたのか(今でこそ似たようなSNS系、ゲーム系のサイトは沢山あるのですが)、ユーザーからは全く支持されず、2年経っても月の売上が数万円しかない、という、およそ冗談、というより悪夢としか思えないような結果になってしまったのです。クライアントもそれなりにコンテンツに投資をしていましたので、当然真っ青ですが、私達はそれを通り越して、エクトプラズムを吐いてました。
最終的にはクライアントが保守費用を払えない、という事態になり、サイトは閉鎖される事になりました。さすがに保守費用が出なければ、弊社としても支える事が出来ません。後にも先にも、弊社がお預かりした公式携帯サイトで、業績が悪いから、という理由で閉鎖したのはこれだけです。それだけにっちもさっちもいかない状態になってしまいました。
結果的に桁違いの大赤字になってしまい、以降、現在に至るまで、携帯サイトの新規構築に置いて、初期費用が完全に0円、というのは基本的にお引き受けしていません(無い訳ではないのですが。それはしっかり結果を残しています)。ですが、身銭を払っただけあって、企画の検証や、技術的な蓄積、という意味で、良いノウハウの蓄積になりました。痛い勉強料でしたが、今の仕事に大きく生きています。
(田中 亨)