町おこしの成功例、失敗例-あきらめるとネット活用の仕方が見えてくる
先日、この記事を見て、ああ、いまだにこんな事があるんだな、としみじみしてしまいました。
以前、ネットを活用して、とある町おこしのお手伝いをしたことがあります。
御依頼頂いたのは、地方自治体ではなく、地元で活動している民間の町おこしグループでした。民間なので、とにかく考えも実行も早く、仕事がやりやすかった記憶があります。
何度か打ち合わせを積み重ねる中で、すぐに気付いたのは、気持ちはある。やる気はある。しかし人材とノウハウとお金がない、という事でした。つまり簡単に言うとやる気だけある、という状態です。
何か事業を立ち上げていこう、という時、「ヒトモノカネ」の三種の神器が必要だと良く言われます。
その中で一番大事なものは何かと聞かれますと、文句なしで「人」です。
なぜなら優秀な人がいれば、モノとカネは集めてくることが出来るからです。
逆に言うと、優秀な人材がいないのに、カネとモノだけあっても使いこなす事は出来ません。
人がいないと、こういう地元PR広告をAirDo機内誌に載せてしまったりします。牛も豚も鶏もいるよって・・・代理店なのか、プランナーなのか印刷会社なのかわかりませんが、どうしてこれを誰も止めなかったのでしょう。売上が上がればPR効果があろうが無かろうが何でも良かったのでしょうか。
以前お手伝いしたそのプロジェクトにはWeb担当という立ち位置で入っていたのですが、問題の本質はやはり熱意はあるが、それ以外は全部無い、という事でした。
そこでいろいろと検討した結果、無理なものは無理なので潔くあきらめましょう、従来型の発想はもう辞めましょう、という提案をしました。
どういう事かと言いますと、地元にいる人達「だけ」で考えて、イベントを立ち上げ、Webを活用して観光客にアピールして、経済を効果を期待する、という従来型のワンウェイな「価値提供型町おこし」はもう成り立たないのでは?という問題提起でした。
ではどうするか、というと、逆転の発想で、首都圏や都市部にいる、地元出身者、縁もゆかりもある人達をネットを使って組織化し、どのような町おこしをしたらいいのか、という事から一緒に考えて貰うと同時に、一緒に楽しんで貰う、という「ご縁型町おこし」にしよう、というやり方です。やりとりはメールやチャットでやればいいわけで、自分達の都合の良いタイミングで書き込んで貰う形であれば、手伝ってくれる皆さんの「本業」への影響も軽微です。
「身内」であると同時に「よそ者」である彼ら彼女らを、町おこしのプロセスから巻き込んでいきましょう、という事なのですが、これには多くのメリットがあります。
1 ゆかりがあるので協力を得やすい
何しろ地元出身者ですので、全然縁もゆかりもない土地とは違って、それなりに郷土愛が有り、協力してくれる可能性が高いです。勿論中には二度と帰りたくないという人もいるかも知れませんがそれはそれとして、地元は「特別扱い」してくれる可能性は高いと言えます。
2 「よそ者の目」と「身内の目」両方の視点を持っている
地元出身者でありながら、外で暮らしているので、良い意味でも悪い意味でも冷静に地元を見る目を持っています。地元を客観的に見つめることが出来る。これは町を活性化させる施策を考える上でとても大きいです。都市部に暮らす者として、どういう事が都市生活者の琴線に触れるのかも肌で分かっています。ハーフみたいなものです。
3 磨かれたビジネススキルを持っている可能性がある。
都会で働いていれば、それなりの企業に勤めている可能性は当然あり、そこで地方ではなかななか積み上げる事の出来ないスキルやキャリアを持っている人材もいるはずです。中にはマーケティングや広告、営業の経験を積んでいる人もいるでしょう。彼らのスキルや、人脈を町起こしに生かす事が出来ます。
4 とりあえずタダで手伝ってくれる
何しろ地元ですからエモーショナルタイ(気持ちのつながり)で成り立っていますので、貨幣による価値交換が前提ではありません。フルタイムではありませんが、立ち上げにおいてコストがかからないのはやはり大変ありがたいです。勿論手伝ってくれる応援団ともいうべきそれらの人達に、何かしっかりしたお返しをしてあげなければ、長続きせずに没落するのは必定なのは言うまでもありません。
私が実際に携わった事例では、そもそもコアとなる町起こし団体も数人しかいなかったため、まずは前段としてWebを立ち上げ、ゆかりのある人を、出来るだけ町に来てもらいつつ、町おこし団体の地元での認知度も上げよう、というところから始めました。ステップ1じゃなく0からという形です。
ネットを見たよ、といって町に来る人が少し増え、「なんか最近知らない人が良く来るな」とか「昔済んでいたとかいう人がお店に来たぞ」という、いわばこのプロジェクトを地元の人達にまずは認知させる、というところから始めたワケです。
小規模な成果ではありましたが、それなりにこのステップ0はうまく行き、ネットで町おこしっていけるんだね、と思って貰えたと思います。私も手応えを感じていました。諸般の事情でその後私はお手伝いからはずれる事になったのですが、このような「よそ者」と「身内」両方の視点を持った、地元にゆかりのある都市生活者を、Webを活用しながら町起こしに生かしていく、というのは今も必勝パターンの一つのように思います。
一つ誤解の無いように言いますと、地元にいる人達が役に立たない、という事ではありあません。お互い持っているものを持ち寄って共に創る、という事が非常に重要だということです。さながらチームマーチャンダイジング(従来のようにメーカーだけがつくるのではなく、原材料メーカー、物流、小売り、関係社がみんなで集まって新商品をつくるやり方)のようなものです。
地元を離れて暮らしている人は、地元の今を知りません。どんな組織でも現場現物現実を知らずして効果的な地域創生の企画・施策は考えられません。地元の人は、地元を知りすぎているが故にマヒしています。室蘭の夜景は昔から変わりませんが、観光資源として使えるかもと気付いたのは最近の話です。こういう資産は田舎には沢山埋もれています。田舎の人、地元の人は「他とは違う何か特別なもの」を探そうとします。そして「うちには何もないよなぁ」と嘆きますがそうではないのです。何でも無いありふれたものにも、ちょっとした味付けで、見せ方を変えるだけで、ものすごい価値があるものに変える事が出来るのです。素材をつくる生産者が地元の人達とするなら、シェフが都会にいる協力者です。片方だけでは料理は作れません。
最近は総務省が音頭を取って、フルタイムで人を送り込む「地域おこし協力隊」なる制度もありますが、私がこのとき提案したプランは、外部からの人材を「ほどほどなコミットメント」で連れてくる、という取り組みでコンセプトが異なり、また取り組みの敷居も低いのではないかと思います。
今後町起こしは、今までのような「価値提供型」というワンウェイスタイルから、共に創る、「価値共創型」へシフトしていく事になると思います。プロセスからやり方を変える事が町おこしでは重要になるはずです。そこにおいてはWebは間違い無くキーインフラとして益々重要になってきます。最近は動画が非常に重要になっており、宮崎県日向市の様な50万ビューを超える事例も出てきました。この動画自体、テレビ等でも紹介されていますので、実際はビュー以上にもっと多くの人の目に触れていると思います。
ネットを活用した町おこしはリアルなツールとして益々力を持つようになりました。町おこしにお悩みの方はお気軽にご相談下さい。