なぜウェブページで動画を再生するために JavaScript ライブラリを利用するのか
はじめに
ウェブページ上で動画を再生するためには、HTML5の<video>タグがシンプルな方法を提供しています。 しかし、多くの動画配信を行うウェブサイトは JavaScript の動画再生ライブラリを導入しています。
本記事では、動画再生ライブラリの導入の必要性と、そのライブラリが提供するメリットを説明します。
JavaScript動画再生ライブラリの必要性とメリット
動画再生ライブラリを利用せず、単にHTML5の標準<video>タグを使用して動画を再生する場合、いくつかの問題に直面することがあります。
まず、動画フォーマットの互換性問題があります。たとえば、HLS(HTTP Live Streaming)形式の動画を準備した場合、これをライブラリのサポートなしで再生しようとすると、Windows版のChromeブラウザでは再生できないことがあります。これは、特定のブラウザが特定の動画フォーマットをネイティブでサポートしていないためです。
次に、プレイヤーのデザインの一貫性も大きな課題です。標準の<video>タグを使用すると、ブラウザやデバイスによってプレイヤーの見た目が異なる場合があります。これにより、ユーザーが異なるデバイスやブラウザでコンテンツを視聴する際に、一貫性のない体験を受ける可能性があります。
これらの問題を解決するために、多くのウェブサイトはJavaScriptの動画再生ライブラリを採用しています。これにより、クロスブラウザ対応(異なるブラウザやデバイス間で一貫した動作や表示を実現すること)を可能にし、サイト提供者としてもユーザーに対して最適な視聴体験を保証することができます。動画配信を行う多くのウェブサイトがJavaScriptの動画再生ライブラリを導入しているのは、こうした背景があるためです。
このような致命的な問題を回避できるだけではなく、動画再生ライブラリを導入することで追加で以下のようなメリットを得られます。
プレイヤーのカスタマイズ性: 動画再生ライブラリを用いることで、動画プレイヤーの外観(再生バー、ボタンなどのUIコンポーネント)をカスタマイズできます。さらに、動画再生に関連する様々なイベントを捉え、それらを利用してより高度なウェブアプリケーションを開発することが可能です。たとえば、動画の再生終了時に自動的に次の動画を再生させたり、イベントをGoogle Analyticsに送信するなどの操作が容易になります。
動画利用体験の向上: 追加機能としてチャプターごとのナビゲーションや字幕の設定などが提供されます。これにより、さまざまなニーズに対応したカスタマイズが可能となり、ユーザーにとってより理想的なビデオ視聴環境を提供できます。
プラグインの活用: 多くの動画再生ライブラリは、拡張機能をプラグインとして提供しています。これらのプラグインを活用することで、追加の開発なしに高度な機能を簡単に導入できます。これにより、開発者は効率的に機能を拡張し、ユーザーにより良い体験を提供することが可能になります。
これらのメリットにより、多くのウェブサイトは動画再生ライブラリを選択しています。それによって、一貫性のあるユーザー体験を全てのブラウザやデバイスで提供しつつ、多機能で柔軟な動画再生環境を実現しています。
JavaScript動画再生ライブラリを採用しない場合
一方で、JavaScript 動画再生ライブラリを利用しない場合を考えると、以下のようなシナリオが考えられます。
動画が汎用的なフォーマットで提供され、その利用ケースが限定的であり、サイトのメインコンテンツではない場合です。例えば、ウェブページの一部に動くバナーとして動画を利用する場合、広く対応しているMP4形式の動画をアップロードして使用することがあります。また、利用者が限定される小規模な社内システムで動画を配信する場合も、ライブラリの導入は必ずしも必要ではありません。
ライブラリを導入するとシステムが複雑化する可能性があるため、状況に応じて導入しない選択をすることも理にかなっています。ただし、動画がウェブサイトの主要なコンテンツの一部である場合、動画再生ライブラリの導入がもたらすメリットは、システムの複雑化を上回ることが多いです。
動画再生ライブラリの導入はプロジェクトの要件や目的に応じて検討されるべきですが、メインコンテンツとして動画を重視するウェブサイトでは、より高度な機能や一貫したユーザー体験を提供するために、ライブラリの導入が推奨されます。
おわりに
ライブラリには様々な選択肢がありますが、弊社では動画再生用のライブラリとして video.js をメインで採用しています。 このライブラリはカスタマイズ性が高く、豊富なドキュメントとプラグインが利用可能であり、その開発も活発に行われているためです。
ウェブページを制作する際、動画再生のためにJavaScriptライブラリが広く利用されている理由、そして導入がもたらすメリットとデメリットについて説明しました。最近では、動画がサイトの主要なコンテンツの一つとされることが増えているため、多くの場合でライブラリの導入が不可欠となっているように思います。