アンケートはDBに入れないと面倒が起こる可能性が高い
失敗事例
もう大昔になってしまいますが、ある日クライアントから1本の電話がありました。
「いや、既存の携帯サイトに、簡単なアンケートフォームをつけてくれないだろうか?実は、今回ちょっとたまたまやる事になってね。で、予算がないんだよね。なので既存の保守費用の範囲で何とかならないだろうか?フォーム1個だけなので、ね、なんとかっ」
という様なお話でした。
これはちょっと困ったなぁ、、とは思ったのですが、転送メールのフォームを付ける事自体は比較的軽微な作業であったため、転送先のメールに飛ばすだけですよ、という事でご理解頂き、作業をさせて頂きました。
「予算がない」というところで、深く考えずに「顧客に言われた通りに」対応してしまったのですが、これが後の大失敗の原因になってしまいました。
そして、いざ蓋を開けると、沢山のユーザーからの回答が来ました。ですが、「費用を頂いてない」という事もあり、社内的には既に「片づいたお話」でした。
ところが、アンケート終了後、そのクライアントから連絡に、我々は耳を疑いました。
「アンケート終わったので、データまとめてください」
「は?」
一瞬目が点になりましたが、「いや、ご予算もないという事で、応募データは担当者の方にメール転送し、後はそちらでExcelなり処理される、というお話ですよね。こちらでも応募データをDBに入れている訳ではありませんので、持ってません。後はそちらで処理されてください、と以前お伝えした通りですが・・・」
とご説明したところ、
「こんな1メール当たり20個近くアンケート項目があるのを、一つ一つExcelにコピペして統計データとれっていうの!?出来る訳ないでしょ!」
とかなり熱くなって話をはじめました。このちゃぶ台返しにはさすがに弊社もびっくりしてしまい、話がかなりこじれていってしまったのです。
話の経緯から考えても、弊社がつっぱねても良いとは思ったのですが、フォーム一つくらいであまりこじれても仕方がありません。結果的に弊社でアルバイトを雇って、全てExcelに投入したデータファイルをお渡ししました。コストは全て弊社持ちになりました。大赤字になった事は言うまでもありません。
当時は、これでもうこのご担当者とはまともなおつきあいは出来ないな、と思いましたが、しかし、「一歩引いて」考えてみると、うちも対応がまずかった点がなかったろうか?という事に気付いたのです。
その原因の一つは、やはりクライアントからの「予算がない」という点で、思考停止してしまい、「言われたとおりに」簡単なフォームをつけてしまった事だと思います。
1応募あたり、名前、住所からはじまって、ちょっとしたアンケートをつければ、20項目くらいになるのは容易に、かつ事前に推測出来た事です。
となれば、例え1,000通の応募であっても、1,000通 × 20項目 = 20,000回のメール・Excelのコピペをする事になる訳ですから、現実的にその担当者が対応出来ない、と「言う事自体」は(話の筋が通っていない事は別として)、ある意味自然なお話だったのです。
この場合、より正しい対応としては、実施するアンケートの趣旨や規模を確認した上で、「予算がどうしても全く無い、という事であれば、転送メールにしますが、後からものすごい回数のコピペになるので実質マンパワーでは不可能です。なので、メール転送ではなく、DBに直接入れる形にしてしまい、アンケート終了後、弊社でDBから直接データを取り出してCSVでお渡しする方が楽で良いですよ。少しだけ費用がかかりますが、いかがですか」
というお話を、弊社から十分ご提案差し上げるべきだった、という事です。
この様なちゃぶ台返しっぽいお話は少し極端な事例かも知れませんが、アンケート終了後の集計において、クライアントが多くの労力、費用を割くハメになる事を、予見できなかった訳ではないので、弊社の説明不足も否めません。
ちなみにその担当者の方は、後にそこを退社されましたが、今でもそのお取引先とは非常に良好なおつきあいをさせていただいています。基本的にビジネスですから、予算がない事は対応が出来ません。ですが、顧客からの話を「鵜呑み」にしないで、きちんと先を見通した上で、クライアントのためになるご提案していく事が大事だと思っています。
(田中 亨)